大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(ネ)1309号 判決

被控訴人の陳述する本訴請求の原因は、控訴会社は、振出日昭和二十四年九月三十日金額五十万円支払人品沢光芳満期昭和二十四年十二月二十日支払地函館市支払場所北海道拓殖銀行若松町支店振出地群馬県太田市振出人株式会社斎藤ホームスパン工業所と記載し、且つ受取人(指図人)の氏名欄を白地式とし、拒絶証書作成義務を免除した為替手形一通を振出し、同年十月五日右支払人の引受を得た上、即日拒絶証書作成義務を免除して被裏書人及び裏書日附を白地とした裏書をして訴外株式会社関東紡機製作所に右為替手形を譲渡したところ、被控訴人は右訴外会社より引渡によりその手形の譲渡を受けて所持人となつたので、昭和二十四年十一月二十一日株式会社富士銀行に取立委任裏書をなし、同銀行をして満期に所定の支払場所にて手形を呈示せしめたが、支払を拒絶せられた。そこで被控訴人は富士銀行より右手形の返還を受け、補充権に基き、本訴提起後(原審準備手続期日たる昭和二十七年四月十五日に)、手形の受取人(指図人)欄を控訴会社と、また控訴会社の裏書中被裏書人の氏名を被控訴人に、裏書年月日を昭和二十四年十月三十日とそれぞれ補充記載し、よつて本件手形に基き振出人にして裏書人たる控訴会社に対し手形金の支払を訴求する、というのである。

右被控訴人の主張によれば、本件為替手形はその要件たる受取人の記載なく、これを白地として振出されたものであつて、しかも満期に至り該白地部分の補充がなされないままで支払のために呈示され、これが補充は本訴提起後に至つて始めて行われたというのであるから、満期における本件手形の呈示は、手形要件を完備しないいわゆる未完成手形の呈示にすぎず、手形法上有効な呈示といい得ないことは多言を要しない。右手形の振出並に裏書に当り、いずれも拒絶証書作成義務が免除されていたからといつて、このことは手形の呈示義務自体までも免除するものではないし、後日受取人の記載が補充されたことにより、その補充の効果が既往に遡及して、呈示が適法と化するものでないこともまた論を俟たないところである。して見れば手形法第五十三条の規定により、既に手形の呈示期間を徒過した被控訴人は振出人、裏書人に対する手形上の権利を失つたものといわざるを得ない。

(薄根 奥野 古原)

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